静脈には逆流防止弁があり血液が心臓に戻りやすくなっています。この弁の働きが悪くなり、逆流や閉塞が起こると静脈圧が高まり静脈が太く膨らんで静脈瘤となります。明らかな原因が不明のものと、最近注目を浴びている深部静脈血栓症（エコノミークラス症候群）の後遺症として起こるものがあります。日本人では40％以上の頻度で認められ、日常、最もよくみられる病気のひとつです。特に高齢の方や女性に多くみられ、リスク因子として遺伝や長時間の立ち仕事の関与などが知られています。

◆症状◆

　下肢の重だるいといった倦怠感や疲労感、痛みや痒み、むくみ等の症状に加えて、足がつる、いわゆる『こむら返り』もしばしば認められます。さらに症状が進むと皮膚炎や湿疹、色素沈着（皮膚の色が黒っぽくなる）、皮膚が硬くなる、皮膚潰瘍(皮膚が崩れえぐられたようになる)なども併発するようになります。また、静脈瘤にそって痛みを伴う発赤と腫瘤を形成する血栓性静脈炎(静脈の炎症)を起こすこともあります。静脈瘤は多彩な症状があり、放置すると少しずつ悪化していきます。

◆診断◆

　下肢を観察し、超音波（エコー）検査にて静脈の太さや逆流の度合いなど静脈の異常の有無を確認します。静脈瘤になっている箇所だけを治療しても再発することがある為、静脈瘤の原因部位を特定することが大切になります。重症の場合は造影剤を用いた静脈造影や、CT検査、MRI検査などの画像検査も行い診断します。

◆治療◆

　基本的な治療として、①長時間の立ち仕事や座位を避ける、足を上げて休憩する、マッサージを行うなど日常生活の改善や、②弾性ストッキング着用による圧迫療法があります。

　血液の逆流が強い場合は、手術による治療を行います。手術法として、逆流が起こっている静脈を抜去するストリッピング術や静脈を縛って逆流を防ぐ高位結紮術、静脈瘤の中に薬物を注入して固めてしまう硬化療法があります。最も頻度の高い伏在静脈が原因となる静脈瘤の場合は、レーザーや高周波(ラジオ波)を用いた血管内焼灼術によるカテーテル治療が可能です。細いカテーテルを静脈内に挿入して、レーザーや高周波エネルギー(ラジオ波)による熱で静脈の内側を焼灼し、静脈瘤を閉塞・消失させる血管内治療です。 また静脈瘤グルー(接着剤)治療があり、医療用接着剤を静脈内に注入し、静脈瘤を治療する方法があります。いずれの治療も保険適応となっており、局所麻酔下に小さな手術傷で施術可能で、約30分で終了します。当院では、下肢静脈瘤の血管内焼灼術(レーザーや高周波)による治療を日帰り又は一泊入院で行っています。術翌日、術後1〜6ヶ月の間に超音波検査などで治療効果判定、再発の有無、および血栓性合併症の検索を行い、術後も丁寧に経過をフォローします。

　下肢静脈瘤は良性の病気であり命にかかわる病気ではない為、症状の程度や超音波検査をもとに適切な治療方法を選択することが大切です。手術適応については患者さんの症状や状態、さらには活動度やご本人の希望も配慮し決定致しますのでお気軽にご相談下さい。